小さなお店の損益分岐点|「あと何人で黒字か」を即答できるようにする 名古屋で看板制作・施工ならミライベクトル

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小さなお店の損益分岐点|「あと何人で黒字か」を即答できるようにする

2026.09.1

小さなお店の損益分岐点|「あと何人で黒字か」を即答できるようにする

「今月、うちの店は黒字ですか」。その日のうちに答えられる店主は多くありません。試算表が届くのは翌月中旬、決算は1年後。けれども値上げやシフト増、看板の出し直しの判断は、今日必要になります。

損益分岐点は、その「今日の判断」のための数字です。やることは足し算と割り算だけ。しかも金額のまま持つより「1日あと何人来れば黒字か」という客数に翻訳すると、現場でそのまま使えます。「月商120万円が目標」ではスタッフは動けませんが、「1日40人」なら動けます。以下の数字はすべてモデル計算(架空の店の試算)です。検算も載せたので、自店の数字に入れ替えてお使いください。

損益分岐点は「売上の方程式」の折り返し地点

お店の売上は客数 × 客単価に分解できます。一方、出ていくお金は性質の違う2種類に分かれます。

  • 固定費……お客様が1人も来なくても発生する(家賃、固定シフトの人件費、リース料など)
  • 変動費……お客様が増えると比例して増える(原価、容器代、決済手数料など)

鍵は限界利益——売上から変動費を引いた残りで、「お客様1人が固定費の穴埋めに置いていってくれるお金」です。これが積み上がって固定費と同額になった瞬間が損益分岐点。そこから先はまるごと利益です。使う式は3本だけ。

  1. 限界利益率 = 1 -変動費率
  2. 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
  3. 損益分岐点客数 = 固定費 ÷ 1人あたりの限界利益

③まで出しきるのが目的です。②で止めると「月商いくら」で終わり、明日の行動に変換できません。モデル店は「郊外の小さなカフェ/席数20/月25日営業/客単価1,200円」とします。

ステップ① 固定費を、紙1枚に集める

判定基準はひとつ。「今月お客様が1人も来なくても、その支払いは発生するか」。イエスなら固定費です。通帳の引き落とし明細を12か月分ながめれば拾いきれます。漏れやすいのは、①店主自身の給料、②年払いの保険料・更新料(12で割る)、③減価償却費です。

表① 固定費の洗い出し(モデル計算・月額)

費目月額
家賃・共益費180,000円
店主の役員報酬(生活費)250,000円
パート人件費(固定シフト分)140,000円
水道光熱費(基本料金+ほぼ一定の分)45,000円
通信・POS・各種サブスク15,000円
損害保険ほか年払いの月割10,000円
設備・看板の減価償却費30,000円
借入金の利息(元本返済は含めない)8,000円
販促費(毎月定額の分)20,000円
その他(清掃・消耗備品など)22,000円
合計720,000円

パート・アルバイトの人件費は両者の中間です。固定シフト=固定費/繁忙期の追加シフト=変動費と割り切るのが扱いやすく、迷ったら固定費に寄せてください。なおシフトや労働時間の設定変更は労働基準法に関わりますので、社労士にご確認ください。

ステップ② 変動費から「限界利益率」を1つの数字にする

判定基準は裏返しで、「お客様がもう1人増えたら、この費用は増えるか」。漏れやすいのは原価以外の変動費——テイクアウト容器、レジ袋、キャッシュレス決済手数料、デリバリー手数料。とくに決済手数料は「経費」の一行に埋もれがちです。

  • 食材原価 1,200円 × 35% = 420円
  • キャッシュレス決済手数料 1,200円 × 3% = 36円
  • 容器・消耗品 1,200円 × 2% = 24円

合計480円なので、変動費率は 480 ÷ 1,200 = 40%、限界利益率は 60%、1人あたりの限界利益は 720円。お客様が1人来るたびに720円ずつ固定費の穴が埋まります。商品ごとに原価率が違っても、まずは店全体の平均で構いません。POSの粗利率で代用する場合、決済手数料と容器代は含まれないことが多いので必ず引いてください。

ステップ③ 「1日あと◯人」に翻訳する

材料がそろいました。あとは割り算だけです。

  1. 損益分岐点売上高 = 720,000円 ÷ 0.60 = 1,200,000円
  2. 損益分岐点客数 = 720,000円 ÷ 720円 = 1,000人/月
  3. 1日あたり = 1,000人 ÷ 25日 = 40人/日

検算します。売上120万円なら変動費48万円、限界利益72万円。固定費72万円と同額で利益はゼロ。つまり「うちは1日40人でトントン」です。

では現状は。直近3か月の平均が1日34人だったとします。月の客数は 34 × 25 = 850人、限界利益は 850 × 720 = 612,000円。固定費を引くと▲108,000円の赤字です。不足客数は 108,000 ÷ 720 = 150人、25日で割って1日あと6人。「月10万8千円の赤字」には途方に暮れますが、「あと6人」なら手の打ちようが見えます。

次に問うべきは、その6人は、うちの店で現実的に取れるのか。ここで店前商圏——店の前を通る人の量と質——を見ます。1日の通行量が300人なら、来店率を2ポイント上げれば 300 × 2% = 6人で、看板や店頭の見せ方の射程内。通行量が30人の立地なら、リピートや予約など別の入口を作る話になります。

時間帯も見てください。満席のランチタイムに6人は足せません。空いている14〜17時で積むのか、朝を新設するのか。時間帯ごとに客数と客単価を並べると伸びしろが見えます。

ステップ④ 4つのレバーの効き目を、数字で比べる

分岐点を下げる方法は4つ。客数を増やす、客単価を上げる、変動費率を下げる、固定費を下げる。モデル店の数字で比べます。

表② 打ち手ごとの効き目(モデル計算・現状は1日34人)

打ち手1人あたり限界利益分岐点客数(月)1日あたり現状との差
何もしない(現状)720円1,000人40人あと6人
A 客単価を100円上げる780円924人37人あと3人
B 変動費率を40%→37%にする756円953人39人あと5人
C 固定費を月5万円下げる720円931人38人あと4人
A+Cを同時に780円859人35人あと1人

※人数はすべて切り上げです。Bなら 720,000 ÷ 756 = 952.4人→953人、952.4 ÷ 25 = 38.1人/日→39人。四捨五入して38人/日にすると 38 × 25 × 756 = 718,200円で固定費72万円に届かないためです。表③も同じ扱いです。

Aの中身だけ開きます。客単価1,300円・変動費率40%なら限界利益は780円。720,000 ÷ 780 = 923.1 で924人、924 × 780 = 720,720円と固定費を超えます。つまり客単価100円(8.3%)の値上げが、固定費5万円の削減より効く。単価アップと固定費削減を重ねれば「あと6人」は「あと1人」まで縮みます。ひとつのレバーで解こうとしないことです。

ただし客単価アップの中身には一線を引いてください。やってよいのは「価値を足して、その分をいただく」こと——もう一品したくなる提案、サイズ展開、品質の底上げ。やってはいけないのは「気づかせずに多く払わせる」こと——小さく書いた追加料金、解約しにくい設計です。

見落とされがちな「返済込みの損益分岐点」

「帳簿は黒字なのに通帳が減る」という相談は多く、原因は損益と現金のズレです。減価償却費は費用として引かれるのに現金は出ていかず、借入金の元本返済は現金が出ていくのに費用になりません(費用は利息だけ)。そこで必要額を「固定費 -減価償却費 + 元本返済額」で置き直します。元本返済が月60,000円なら、720,000 -30,000 + 60,000 = 750,000円です。

表③ 会計上の分岐点と、現金ベースの分岐点(モデル計算)

項目会計上現金ベース
必要な限界利益720,000円750,000円
分岐点売上高1,200,000円1,250,000円
分岐点客数(月)1,000人1,042人
1日あたり(25日営業)40人42人

現金ベースは 750,000 ÷ 720 = 1,041.7 で1,042人、1,041.7 ÷ 25 = 41.7 で42人/日。検算すると 1,042 × 720 = 750,240円で必要額を満たします。つまりこの店は帳簿上トントンの1日40人で回していても、現金は毎月3万円ずつ減っていく。融資があるお店は、日々の判断に42人を使ってください。なお税金は入れていません。消費税は消費者が負担し事業者が納付する税ですから、売上に含まれる分を手元資金と考えないこと。実務は顧問税理士にご確認ください。

よくある間違いと、毎月10分の運用にする

現場で多い失敗は4つです。①店主の生活費を固定費に入れていない(分岐点が20〜30万円ぶん低く出て、「トントンのはず」なのに生活が苦しくなる)。②客単価を感覚で置いている(感覚値は高めに出る。レジの直近3か月の実績平均=売上合計 ÷ 会計数を使う。グループ来店が多い業態は「1組」と「1人」のどちらで数えるかを先に決める)。③年に一度の支出を月割りしていない(その月だけ突然赤字になる)。④一度計算して終わりにしている(半年前の分岐点は、もう自分の店の数字ではない)。

続けるコツは作業を軽くすることです。毎月更新するのは固定費・限界利益率・客単価の3つだけ、10分で終わります。「今月の分岐点客数 ◯◯人/1日 ◯◯人」と紙に書いてバックヤードに貼る。ノルマではなく共有です。季節性のある業態は年間の分岐点(年間固定費 ÷ 限界利益率)も持っておくと安心です。

まとめ

手順は3つです。①固定費を漏れなく集める(店主の給料と年払いの月割を忘れずに)、②変動費から「1人あたり限界利益」を出す、③固定費 ÷ 1人あたり限界利益で分岐点客数を求め、営業日数で割って「1日◯人」にする。モデル店は1日40人、現状34人で「あと6人」。融資があるなら現金ベースの1日42人も忘れずに。計算は内側を向いて、打ち手は外側を向いて選ぶ。損益分岐点は、会計用語ではなく経営の道具になります。

よくある質問

Q. 固定費か変動費か、どうしても判断に迷う費用があります。

A. 迷ったら固定費に入れてください。分岐点が高めに出るぶん、判断が安全側に倒れます。代表例は水道光熱費で、「過去12か月の最低額を固定費、超えた分を変動費」と割り切れば実用上は十分です。

Q. 損益分岐点比率はどのくらいなら安全ですか。

A. 「損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100」で計算します。モデル店の現状は売上1,020,000円(850人 × 1,200円)なので 1,200,000 ÷ 1,020,000 × 100 = 約118%、100%超で赤字です。適正値は業種・立地・投資段階で変わるので、他店と比べるより自店の12か月の推移で見てください。

Q. これから開業するので、まだ実績がありません。

A. 固定費は見積書と契約書からほぼ確定でき、変動費率も原価表と手数料率から積み上げられます。決められないのは客単価と客数だけなので、客単価を3パターン置いて分岐点客数を出してください。その人数が店前商圏の通行量に対して現実的か、席数と営業時間で収まるかを確認します。

Q. スタッフに分岐点客数を共有してもよいものでしょうか。

A. 共有をおすすめします。ただし「あと6人でうちは黒字になる」という事実だけを伝え、届かなかった日を責めないこと。なお成果を給与に連動させる場合は賃金規程の整備が必要ですので、社労士にご確認ください。

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【監修】株式会社ミライベクトル 取締役社長 大平典男(中小企業診断士/MBA)
看板・広告業に携わり20年。名古屋市守山区を拠点に、東海3県で看板の企画・デザイン・製作・施工を自社一貫で行っています。経営に関するご相談も承っております。(会社案内