このページは、連載「看板・店舗集客ノウハウ100本」のうち「立地・動線・商圏の読み方」に関する8本の記事の内容を、まとめて読めるように再構成したものです。駅から遠い、大通りに面していない、ビルの2階や地下にある――そうした立地条件で悩む店舗オーナーの方が、看板を計画する前に押さえておきたい考え方を一望できます。
各記事の要点を論点別に整理していますので、まず全体像をつかみ、気になったところから個別の記事へ進む「見取り図」としてお使いください。
「立地が悪いからお客さんが来ない」という悩みは、そのままでは打ち手につながりません。分解してみると、実際に起きている問題は①そもそも見えない、②何の店か分からない、③中の様子が分からず入りにくいの3つに集約されます。悪立地の看板集客は、この3つの障壁を1つずつ潰していく作業だと整理できます。
見方を変えれば、立地の不利は家賃という固定費の軽さでもあります。一等地との家賃差が月10万円なら年間で120万円。その一部を看板に振り向ければ、視認性と誘導力の面で一等地の店舗に近づけます。
お客様が徒歩で来るのか、自転車か、車かによって、狙うべき商圏の広さも、看板から読み取ってもらえる情報量も大きく変わります。同じ看板でも、歩行者には読めるのに、走行中の車からはまったく読めない、ということが実際に起こります。
| 移動手段 | 商圏の目安 | 看板設計の考え方 |
|---|---|---|
| 徒歩(時速4キロほど) | 半径数百メートル | 数秒から十数秒の余裕があるため、メニューやこだわりを店頭のスタンド看板・ウィンドウサインで読ませる |
| 自転車 | 1〜2キロ | 徒歩と車の中間。短い言葉で興味を引き、店頭で詳しく伝える二段構え |
| 車(時速40〜60キロ) | 数分で移動できる範囲 | 看板が視界に入るのはごくわずか。大きな文字とロゴに絞り、駐車場の有無や「この先左折」を添える |
商圏が広い店舗ほど、店前の看板だけで完結させず、手前の道路沿いに案内を置く設計が求められます。車向けの看板づくりでは「何を載せるか」よりも「何を載せないか」を決めることのほうが大切です。来店客の移動手段は、お客様に「今日はどちらから来られましたか」と尋ねる、駐車場・駐輪場の利用を1週間記録するといった方法で確かめられます。
看板の設置場所は、地図アプリや人口データだけでは決められません。駅から近くてまっすぐな道でも、幹線道路や踏切で人の流れが止まって別の道へ逃げていることがあり、逆に地図では目立たない路地が抜け道として使われていることもあります。
調べ方は難しくありません。平日と休日それぞれ、朝・昼・夕方の3回ほど、店の前と設置候補地に5分ずつ立ち、通行人と車の数、歩いてくる方向、立ち止まる場所を記録します。お客様が来る方向から歩きながら写真や動画を撮っておくと、どの地点で自店が視界に入り、どこで街路樹や他店の看板に隠れるかを後から確認できます。時間帯によって歩く人も目的も入れ替わるため、自店の営業時間に前を通る層へ向けて言葉を決めるのが基本です。
あわせて、近隣の同業がどんな看板を出しているかも歩いて見て回ります。どの店も「おいしい」「安い」といった抽象的な言葉ばかりなら、具体的なメッセージで比較の土俵から抜け出す余地があります。周辺の看板が寒色系でそろっているなら暖色を選ぶなど、色や書体でも埋もれない工夫ができます。各店の看板を同じくらいの距離から撮影して一覧に並べると、地域の傾向とまだ誰も使っていない表現がひと目で分かります。
看板は店の前に置くものだとは限りません。人の流れの上流に置いて、見込み客を迎えに行くことができます。駅・大型商業施設・駐車場といった人の流れの起点から自店までのルート上で、進路の判断が必要になる地点すべてに案内を置くのが原則です。曲がり角が2つあるなら最低2か所。案内が途中で途切れると、多くの人はそこで探すのをやめてしまいます。
店の敷地に置き場所がない場合も、窓ガラスのウィンドウサイン、壁面の上部や柱まわり、テントやシャッター、社用車のカーラッピングなど、見落とされている面が残っていることが多くあります。それでも足りなければ、交差点に面したビルの壁面や月極駐車場のフェンスなどを有償で借りる方法もあります。その際は使用料・期間・原状回復の負担などを書面で取り決めておくことが大切です。
設置には許可が必要になる場合があります。敷地外の看板は土地所有者の承諾に加えて屋外広告物条例に基づく許可が、歩道や道路にかかる場合は道路占用許可・道路使用許可が関わります。自己の敷地内でも、高さ4mを超える広告塔・広告板は建築基準法上の工作物として確認申請の対象になります。また、看板が破損して他人に損害を与えた場合には民法717条の工作物責任が問われることがあるため、設置後の点検も計画に含めてください。
店の前まで来ていながら、ドアに手をかけずに通り過ぎる人は少なくありません。ためらいの正体は「中が分からない」という不安です。入口付近の明るさを前面の道路より一段上げ、スタンド看板や足元の表示で進む方向を示し、迷いを作らないことが基本になります。
ビルの2階以上や地下の店舗では、この設計がいっそう重要です。1階で「存在・業種・階数」をセットで伝え、階段の蹴込みや壁面を広告面として使って上りながら期待感を積み上げ、階段入口には店内写真・料金の目安・営業時間といった判断材料を置く。この3段階で考えると、手を入れるべき場所がはっきりします。なお、階段は共用部にあたることが多く、施工にはビルの管理会社やオーナーの承諾が必要になるのが通常です。
確認は、お客様が来る方向から20mほど手前を実際に歩いてみるのが確実です。店に来たことのない家族や知人に歩いてもらい、どこで店に気づいたかを聞くと、自分では気づかない引っかかりが見つかります。
立地を変えることはできませんが、人の流れを読み、動線の上で伝え方を変えることはできます。商圏を移動手段から定義し、現地を歩いて人の流れと競合を確かめ、動線の上流から入口までの各地点に必要な案内を置く――この順番で考えれば、立地のハンデはかなりの部分まで埋められます。それぞれの論点は、個別の記事でさらに詳しく解説しています。